The Dialogue of The Night
RIQUO
The Dialogue of The Night
RIQUO
Ⅰ~Ⅸ <2007-13>
by RIQUO
feat.Jun Kawasaki
The Dialogue of the Night ~夜の対話~
とおいとおいそのむかし
とおいとおいくにの
それはたぶんフランスか どこか
ときはじゅうよんせいきのはじめくらい
たかいたかいとうのうえのちいさなおへやに
たったひとりぼっちでくらしているおひめさまがおりました
いつもひとりぼっちだったので
ときおりむしたちがしんぱいしてとんであそびにやってきました
おさないころおひめさまはむしがだいきらいでしたが
おとなになるにつれてそのみにくいむしたちをだんだんとすきになってゆきました
ときがたちおひめさまが しにむかおうとするころ
ゆいいつのおともだちはむしだけだったかもしれません
おひめさまはおんがくがたいそうおすきで
いつもうたをうたってくらしておりました
それは
ことばのないうた
おんぷのないうた
しがないうた
いきるための
せいなるうた
そして
おひめさまは
おとのないことばをはなしながら
めにはうつらないせかいだけをみて しんじてくらしていました
すべてときはよるでした
あけがたにちかいよる
くさばなもむしたちもまだぐっすりとねむっているころ
そんなころにうまれた
ちいさくてひそやかな
だれもしるよしもない
そんな歌
そんな音楽
■目次■
The Dialogue of The Night ~夜の対話~ Ⅰ~Ⅸ(完結編) <2007-13> TotalTime 43'08"
tr.1Ⅰ章 prologue<2007> 4'17''
おとぎ話の始まり
私たちのおとぎ話は今始まったばかり
夜の対話と共に
そこから私たちの夢は飛び立った
静寂と深い海 そしてこの夜に
→歌詞
tr.5Ⅴ章<2009> 2'41''
これは戦いの歌
私は魔女と戦うために行く
この世の悲しみの全てを滅ぼすために
無駄な抵抗をして傷つくくらいなら、死んだほうがまし
そう、私は魔女と戦うために行く
→歌詞
tr.7 Ⅶ章-1<2010> 4'43''→instrumental
tr.8 Ⅶ章-2<2010> 2'54''
ムダな愛。(2ブ構成~勇敢な気持ち、不安な微笑みと嘆き)
手の届かない、叫びさえも届かない
夜と暗闇から抜け出そう
そこにはもう戻れないし
あなたを愛することはやめたの
→歌詞
tr.10 Ⅸ章<2013> epilogue 4'19''
おとぎ話の終わり
終わりのない始まり
感情を「所有」する事は出来ない
沈黙と愛を守り続ける
夜の対話と共に
暗闇が夜明けに変わる頃
あなたは私より(私と)親密だった
私たちのおとぎ話は今始まったばかり
そこから私たちの夢は飛び立った
静寂と深い海 そしてこの夜に
→歌詞
Listening corner
Ⅳ章
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Ⓒriquo
愛しい月よ
太陽は沈み消えていった
ねぇ 聞いてちょうだい
私の言葉 おとぎ話を
どうしたら私の話を聞いてくれるの?
ねぇ 聞いてちょうだい
音のない言葉を
春の風より激しく
あなたは私を抱きしめてくれる
でも あなたの鼓動も
体温も感じることはできない
私たちのおとぎ話は今始まったばかり
夜の対話と共に
そこから私たちの夢は飛び立った
静寂と深い海 そしてこの夜に
春の風より優しく
あなたは私の心と瞳を包み込んでくれる
でも 私には聞こえない
あなたの言葉も あなたの音楽も
Ⓒriquo
私の心と夢想を静かな森に沈めよう
あなたの言葉 そして想いを湖の奥深くに沈めよう
沈めよう・・・海の底深く
あなたを想って
静かに
夜のおとぎ話とともに
静かな月を見ながらあなたの音と夢を想像する
そして あなたは私の声と眼差しを真夜中に想っているはず
あなたに触れられようか?
私を感じられようか?
そして 導くことができようか?
私たちは時の果てまでも昇り続ける
そして 夜の果てまでも
Ⓒriquo
私はあなたを助けるために森へ行く
魔女の呪いを解くために
光が悪戯して 昼が夜に変わっても
私はあなたを救うために森へ行く
私は魔女と戦うために行く
この世の悲しみの全てを滅ぼすために
抵抗をして傷つくくらいなら 死んだほうがまし
そう 私は魔女と戦うために行く
2つの世界 2つの心 2つの脅威
2人の嘘 2人の罪 2人の人生
Ⓒriquo
手の届かない 叫びさえも届かない
夜と夢から抜け出そう
そこにはもう戻れないし
夢を見ることはやめたの
手の届かない 叫びさえも届かない
あなたの情念 まなざしから離れよう
そこにはもう戻れないし
あなたを愛することはやめたの
あなたのことを愛してるって思ったり
そんな私の事をおばかさんだと思うならば
私のそばにいれたはず
手の届かない 叫びさえも届かない
夜と暗闇から抜け出そう
そこにはもう戻れないし
あなたを愛することはやめたの
そこにはもう戻れないし
あなたを愛することはやめたの
Ⓒriquo
私の話を聞いていないのね
でも私はあなたに言おうとしているの
暗闇が私たちの夢を奪い去る そして
あなたは姿を消し
私のもとから立ち去る
あなたは私を知らない
だから? 私を手に入れようとする
私たちの想いは夜に包まれる
あなたは偽りながら
自分の命を救済する
あなたを探す夢で目が覚める
私は愛を信じている
あなたを愛する夢で目が覚める
あなたの愛を信じている
だから 話そうとしているの
あなたと私の
真実のおとぎ話を
Ⓒriquo
どこにいるの?私は?
月は沈み消えていった
朝焼けにあなたが溶けてゆく
静かな言葉と共に
感情を所有する事は出来ない
私たちは沈黙と愛を守り続ける
夜の対話と共に
ねえ 聞いてちょうだい
私の言葉 おとぎ話を
決して繰り返しはしない
私たちはお互いの全てを話した
そして それなりの時間が経って
私たちは歌うのを止めた
暗闇が夜明けに変る頃
あなたは 私より(私と) 親密だった
私たちのおとぎ話は今始まったばかり
そこから私たちの夢は飛び立った
静寂と深海 そして この夜に
アーティストが、鏡に写すように、身に滲みた音の作法を識るのはいつだろうか。耳にする音楽が新鮮さを失い、その風景に苛立ちを覚えたときだろうか。好きだった音楽を、まるで影踏みのように追いかけて、いつの日か、雲ひとつない、影ひとつない風景の中に自分の影だけを認めたとき、だろうか。自らは決して踏むことが出来ない影、
他人にしか踏むことが出来ない影に気がついたとき、だろうか。日々繰り返してしまう仕草、ついつい選んでしまう色。快音を求めて無意識に繰り返してしまう指の動き。アーティストの日常は、他人の影から自分の影を切り取るための行為の連続なのかもしれない。だが皮肉なことに分身である影は、他人の影を映す太陽の方向からではなく、
視線を太陽から真逆に逸らすことでしか、見ることも切り取ることも出来ない。しかしアーティストの眼差しがいつ反転するのか、もしくはそうすべきなのか、おそらく誰にもそんなことはわからない。ある音楽の形、それを簡単にケーデンスといってもいいかもしれない。例えば、チャーリー・パーカーの音楽は、ブルースと、ドイツの(リズムチェンジ)ケーデンスの二重性が産んだというように。それはユダヤとアフリカのディアスポラの重なりがビバップを産んだことを示す、音楽の形。
ここには一つの音楽があって、それはある一つの形を示していると、少なくとも私は感じる。しかしおそらくその形を、どうやら当事者である彼女は、あまりはっきりと認めたくないと無意識に感じているようだ。その形が裸のようにあまりにも剥き出しだと本人は感じるのかもしれない。しかし私はその正直な音楽の表情に、素直に心惹
かれる。この音の形は、どうやって彼女の手に灯り、身体に宿ったのか。
しかしそんな想念を打ち砕くサウンドを彼女は躊躇いなく導入する。それは彼女の音楽の形とは、真逆のサウンド。夢ごこちに上昇する爽快な音を地上に引きずり下ろすそんなサウンドを彼女は導入する。混濁したサウンドの僅かな隙間から垣間見える彼女の音の形は、不条理の中で輝きを増すと、彼女は感じているのだろうか。ここには一つの意図があって、それは彼女の願いを明らかにしていると、おそらく誰もが感じる。歌となって現れるテキストとは無関係の願い。それが音楽的なものなのか、私は、私が感じる音楽の形に照らして、どうなのかがわからない。ただ、それは彼女のこの音楽にこめた願いであることに違いないし、私たちは彼女の音楽の形が、誰かのサウンドと重なって映し出すハレーションのような風景全体を、もう一つの音楽として耳にしている。
そういえば、一つ不安なことがある。私は彼女の影を踏み損ねているのではないだろうか。
高見一樹 2021年3月
【挿絵、イメージについて】
赤が好きだ。情熱や愛情、生命力等ポジティヴなイメージに相反し、争いや警告等ネガティヴなイメージをも連想させる。両極端に異なるイメージを持つ色としてもとてもミステリアスに感じる。幼き頃蟻に生まれ変わりたかった私は、ここに来てカイガラ虫に変身してみた。サボテン科の植物に寄生して生きるこの虫は、雌の個体から赤い色素が採集されるという。この物語を作った当時を何となく思い出しながら、過去に撮った写真もコラージュしたりと、無骨ながらもこの物語に付随する思いを率直に色や形にしてみた。
【作品について】
これは極々普遍的な私の日常の中で生まれた(脳内)ノンフィクション、極めて哀歌に近い暗闇の中のラヴソングです。笑)演奏していた当時何故日本語(母国語)でないの?という問いがよくあったのですが、答えはとてもシンプル。とてもとても恥ずかしかったからです。そして英語は私の頭には理解し難い言語であるから。着想から17年、録音から11年…。静止しているかのようなペースでここまで来てしまい、共演の河崎さん、関係者のみなさまにはもうお詫びをする勇気もなくなってしまったけれども、厚かましくもこの細やかな私の音の軌跡をアウトプットする事で、これからの新たな音世界が広がっていくことを密に念じている。小さな私の小さな世界。人間の持つ醜くも美しくも悲しくもあるミクロマクロな心の世界です。存在する、いえ、存在なき、わたくしではない、または私かもしれない誰か、自然、そして見えないものとの対話、想像し得る万物との心の対話です。そこに特別な事は何もないんだけれども。 最後に私のそばに居てくれた、居てくれる愛すべきみなさまへ。本当に感謝しています。そしてこれから出会えるかもしれないみなさまにも。
RIQUO 2024年4月